2017年6月19日月曜日

「木造」電車阪急1形を作る(2)~木材の選定と設計~

前回に引き続き、「木造」電車阪急1形について
(前回の様子はこちら

車種が決まり、次は使用する木材の検討に入りました。
木材は天然素材のため、木材の種類によって材質が全く変わってきます。
また、今回は特に、鉄道模型に使うため、レーザー加工できる薄い素材であることが求められます。

調べてみたところ、レーザー加工用の木材として、檜の板が発売されていることが分かりました。
(株)ウッドボックスから発売されている、「東京檜」という檜板です。
通常、3mm厚や、6mm厚などの薄板は幅が10cm幅程度と狭く、側板の幅が10cm以上は必要なGゲージで使用するには少々窮屈です。(レーザーカッターは、ずれることがあるため、端に余白が5㎜以上はないと、部品の端が切れてしまう可能性がある)
しかし、東京檜の檜板は、12cm・14cm幅と広いため、Gゲージでも側板がしっかり入ります。
また、檜では珍しい1mm厚板もあり、シルヘッダーなどでも使用できそうです。

今回は、側面の扉間部分、床板に6mm板、側面の戸袋部分、前面、ダブルルーフの屋根骨組に3mm板、車体外板に1mm板を採用することにしました。

木材が決まったところで、設計に入ります。

檜の薄板は、湿度によって木目方向に大きく反ってしまうため、単純に3mm板1枚で立体物を作ろうとすると、どんどん反っていってしまいます。
そのため、3mm厚板を使うときは、強度を上げるために、木目を、横・縦・横と1枚ずつ変えながら重ねていく必要があります。

このため、設計する際には、木目の向きに注意する必要があります。

今回は、設計にFUSION360を使用してみました。
FUSION360は、AUTODESK社の3Dモデリングソフトで、これまでのモデリングソフトと異なり、パーツ単位で設計し、あとで組み合わせる、アセンブリ(組立)機能が充実しています。
そのため、複数のパーツを組み合わせて作る、模型制作に使いやすいツールと言えると思います。

図面の寸法をもとに、Gゲージサイズに変換し(今回は1/24で製作したため、各寸法を24で割る)、設計を進めていきました。
FUSION360は、レンダリング機能もあるため、モデル作成中に完成イメージを確認することができます。
車体外観のイメージ
室内のイメージ

この後、2次元データにし、木材を加工していくのですが、つづきは次回。
デハ




「木造」電車阪急1形を作る(1)~構想~

お久しぶりです。

今回から新型車両の製作に入っていきたいと思います。

今まで、模型の製作には、素材に、加工性の良いペーパーや、耐水性のあるプラなどを使用してきました。
しかし、それではどうしても表現できないものがありました。

今では(実物の)鉄道車両の素材は、ステンレスやアルミ、普通鋼などが一般的ですが、大正時代~昭和の初めにかけては”木”で作られた電車が多かったのです。
初期の鉄道車両は台枠を除いて全木製でしたし、安全上の問題から骨組みに鋼材が使われ始めた昭和初期でも、室内の素材には木が使われていたのです。
木造電車の車内(イメージ)
木でつくられた電車にしかない、独特の温かみのある内装、これはなかなか他の素材を使用しても再現できないものです。
しかし、木はこれまで、細かい細工がしにくい難点があり、鉄道模型ではほとんど使用されてきませんでした。
最近、レーザー加工技術が向上し、木でも細かい加工ができるようになってきました。
そこで、今回は”木”で木造の電車を試作してみようと思いました。

木を使った電車は、明治後期から、大正時代にかけて製造されました。
製造年が古いため、詳細な図面が残っている車両がかなり少ないため、どの車両を作るか検討しました。
そして、比較的詳細な図面が残っていた、阪急の1形を製作することにしました。

阪急1形は、阪急の前身、箕面有馬電気軌道の開業に合わせ、1910年(明治43年)に製造された車両です。
木造13.5m、3扉の当時としては近代的な車両でした。
登場当初は宝塚線、のちに今津線などの支線で活躍しました。
一部の車両は、昭和24年の京阪京津線(当時は阪急と京阪は同一会社でした)四宮車庫の火災に伴う車両不足で、石山坂本線に転出、のちに京阪カラーをまとって琵琶湖畔を走り抜けました。
また、一部は、和歌山電気軌道鉄道線(のちの和歌山電鐡貴志川線)、野上電気鉄道に譲渡され、野上電鉄に譲渡された車両は、野上電鉄が廃止された平成6年まで活躍しました。
現在では、最後まで阪急に残った1号車が阪急正雀工場に保存されています。

実車は、登場時は緩やかな丸みのある前面でしたが、のちの改造で平らな角型前面に改造されています。

今回は、側面は登場時、前面は角型改造後の姿で作っていきたいと思います。

つづきは次回

デハ