2017年9月15日金曜日

「木造」電車阪急1形を作る(3)~データの加工・切り出し~

前回に引き続き、「木造」電車阪急1形について
(前回の様子はこちら

3次元データを2次元データに加工し、木材を切り出します。
Fusion360には、画面上で設計したものをDXF(2Dデータの汎用形式)形式で出力する機能があるため、今回はこの機能を使い、2次元データに加工しました。

オブジェクトを選択し、メニューの「スケッチ」→「プロジェクト/含める」→「プロジェクト」を選択すると、面の寸法がスケッチに投影されます。
↑投影されたスケッチ
次に作成されたスケッチを選択し、DXF形式で保存を選択し保存します。これで2Dデータに変換されます。
作成されたDXFデータはillustratorで開くことができます。各部品のデータを開き、切り出しができるよう、線色の調整、寸法の調整を行います。

調整が終わったら、檜板にレーザー加工を行います。
↑加工が終わった檜板
今回はここまで
次回は、切り出した車体の加工を行います。
デハ


2017年6月19日月曜日

「木造」電車阪急1形を作る(2)~木材の選定と設計~

前回に引き続き、「木造」電車阪急1形について
(前回の様子はこちら

車種が決まり、次は使用する木材の検討に入りました。
木材は天然素材のため、木材の種類によって材質が全く変わってきます。
また、今回は特に、鉄道模型に使うため、レーザー加工できる薄い素材であることが求められます。

調べてみたところ、レーザー加工用の木材として、檜の板が発売されていることが分かりました。
(株)ウッドボックスから発売されている、「東京檜」という檜板です。
通常、3mm厚や、6mm厚などの薄板は幅が10cm幅程度と狭く、側板の幅が10cm以上は必要なGゲージで使用するには少々窮屈です。(レーザーカッターは、ずれることがあるため、端に余白が5㎜以上はないと、部品の端が切れてしまう可能性がある)
しかし、東京檜の檜板は、12cm・14cm幅と広いため、Gゲージでも側板がしっかり入ります。
また、檜では珍しい1mm厚板もあり、シルヘッダーなどでも使用できそうです。

今回は、側面の扉間部分、床板に6mm板、側面の戸袋部分、前面、ダブルルーフの屋根骨組に3mm板、車体外板に1mm板を採用することにしました。

木材が決まったところで、設計に入ります。

檜の薄板は、湿度によって木目方向に大きく反ってしまうため、単純に3mm板1枚で立体物を作ろうとすると、どんどん反っていってしまいます。
そのため、3mm厚板を使うときは、強度を上げるために、木目を、横・縦・横と1枚ずつ変えながら重ねていく必要があります。

このため、設計する際には、木目の向きに注意する必要があります。

今回は、設計にFUSION360を使用してみました。
FUSION360は、AUTODESK社の3Dモデリングソフトで、これまでのモデリングソフトと異なり、パーツ単位で設計し、あとで組み合わせる、アセンブリ(組立)機能が充実しています。
そのため、複数のパーツを組み合わせて作る、模型制作に使いやすいツールと言えると思います。

図面の寸法をもとに、Gゲージサイズに変換し(今回は1/24で製作したため、各寸法を24で割る)、設計を進めていきました。
FUSION360は、レンダリング機能もあるため、モデル作成中に完成イメージを確認することができます。
車体外観のイメージ
室内のイメージ

この後、2次元データにし、木材を加工していくのですが、つづきは次回。
デハ




「木造」電車阪急1形を作る(1)~構想~

お久しぶりです。

今回から新型車両の製作に入っていきたいと思います。

今まで、模型の製作には、素材に、加工性の良いペーパーや、耐水性のあるプラなどを使用してきました。
しかし、それではどうしても表現できないものがありました。

今では(実物の)鉄道車両の素材は、ステンレスやアルミ、普通鋼などが一般的ですが、大正時代~昭和の初めにかけては”木”で作られた電車が多かったのです。
初期の鉄道車両は台枠を除いて全木製でしたし、安全上の問題から骨組みに鋼材が使われ始めた昭和初期でも、室内の素材には木が使われていたのです。
木造電車の車内(イメージ)
木でつくられた電車にしかない、独特の温かみのある内装、これはなかなか他の素材を使用しても再現できないものです。
しかし、木はこれまで、細かい細工がしにくい難点があり、鉄道模型ではほとんど使用されてきませんでした。
最近、レーザー加工技術が向上し、木でも細かい加工ができるようになってきました。
そこで、今回は”木”で木造の電車を試作してみようと思いました。

木を使った電車は、明治後期から、大正時代にかけて製造されました。
製造年が古いため、詳細な図面が残っている車両がかなり少ないため、どの車両を作るか検討しました。
そして、比較的詳細な図面が残っていた、阪急の1形を製作することにしました。

阪急1形は、阪急の前身、箕面有馬電気軌道の開業に合わせ、1910年(明治43年)に製造された車両です。
木造13.5m、3扉の当時としては近代的な車両でした。
登場当初は宝塚線、のちに今津線などの支線で活躍しました。
一部の車両は、昭和24年の京阪京津線(当時は阪急と京阪は同一会社でした)四宮車庫の火災に伴う車両不足で、石山坂本線に転出、のちに京阪カラーをまとって琵琶湖畔を走り抜けました。
また、一部は、和歌山電気軌道鉄道線(のちの和歌山電鐡貴志川線)、野上電気鉄道に譲渡され、野上電鉄に譲渡された車両は、野上電鉄が廃止された平成6年まで活躍しました。
現在では、最後まで阪急に残った1号車が阪急正雀工場に保存されています。

実車は、登場時は緩やかな丸みのある前面でしたが、のちの改造で平らな角型前面に改造されています。

今回は、側面は登場時、前面は角型改造後の姿で作っていきたいと思います。

つづきは次回

デハ

2017年1月26日木曜日

Gゲージ車両の作り方 二軸動力(その2)

(旧ブログ「吊り掛け電車の通い道」の記事を、編集しまとめたものです。)


Gゲージの動力車両を作る、今回は二軸動力の電気配線をしていきたいと思います。
前回の記事はこちら


モーターで動くタイプのGゲージでは、主に2つの電源方式が使われています。

一つはコンセントからパワーパックを介して線路に通電し、線路から集電する方式。
もう一つは、車両内に電源を搭載し、遠隔制御する方式です。

1つ目の線路から集電する方式は、Gゲージ以外にも多くの鉄道模型で用いられている方式で、パワーパックで細かな速度制御ができるなどのメリットがあります。

しかし、Gゲージだけなぜか、メーカーによって線路のプラスマイナスが異なるというデメリットがあります(レーマン製は右側のレールがマイナスの時に前進し、他社は右側マイナスで後進してしまう)。
また、Gゲージでは、ポイントが非選択式という方式を採用しているため、線路に電圧を入れると、駅にいる列車全てが動き出すという事態が起きてしまいます。

そこで、今後、線路集電のGゲージ車両を自作しようと考えている方は、動力に逆転スイッチを取り付けることをおすすめします。
このスイッチを取り付けると、先程の線路集電のデメリットが全て解決します。


さて、2つ目の電池を搭載する方式ですが、こちらは最近のラジコン技術の進化で、少しずつ出始めている方式です。

こちらは、線路に電気を流さなくても走る(線路がなくても走ります。)ほか、前述のような極性の違いもありません。

しかし、遠隔制御なので、電波の種類によっては、他の電波と混信したり、受信距離以上に広いレイアウトでは、コントロールが効かない可能性があります。


今回は、線路集電と電池駆動をスイッチで切り変えられるように配線していきたいと思います。
配線図は以下の通りです。
線路電源と電池電源を併用する時の配線図


1.集電板の製作
線路から電気を取るためには、集電板を車輪に接触させる必要があります。
集電板はLGBなどで製品化されていますが、自作することもできます。
集電板は、弾力のある金属がよいので、0.5mmの燐青銅板を使用します。
車輪をうまくこするように調整(こする力が強すぎると車輪回転に影響する)したあと、床板にネジ止めします。
燐青銅板から製作した集電板
床板に取り付けた集電板(ネジ止めされた銅色のパーツ)
2.逆転スイッチ・切り替えスイッチの取り付け
今回は、逆転スイッチにタミヤの6Pスイッチを使用しました。
タミヤのスイッチは、中立状態でOFFにすることもできるため、線路上で停止させることができます。(同様のタイプのスイッチは他社でも発売されています)
なお、6Pスイッチの中には、バネで中立状態に戻ってしまうものもありますが、そのタイプは逆転スイッチとしては使えません。

床板にスイッチが入る穴をあけ、逆転スイッチをはめます。
線路電源と電池電源を併用する場合は、もうひとつ6Pスイッチを取り付けます。
床板にはめ込んだ逆転スイッチ
3.電池ボックスの取り付け
(線路集電専用の場合は不要です)
切り替えスイッチを電池に切り替えたときに使う、電池電源を設置します。
今回は、簡単に9v電池のフリー走行としました。
この部分に、RC基板を設置するとRC化できます。
RC化は、昔はトイラジ改造が主流でしたが、今はZigBeeやArduino等で簡単に自作できるようになりました。
床板に穴をあけ、9v電池用の電池ボックスを設置します。
床板に設置した電池ボックス(写真右手前)


4.電気配線
前述した配線図をもとに、電気配線をしていきます。
今回の配線図

ここまでで製作してきた集電板、逆転スイッチ、電源切換スイッチ、ギヤボックスのモーターを導線で接続していきます。
接続したところで正しく配線されているか確認した後、はんだ付けして配線完了です。
はんだ付けしたスイッチ
5.完成
はんだ付けが完了したら、動力の完成です。
完成した動力
この上に車体を作ると、Gゲージの電車になります。
車体を載せて完成させたところ
いかがでしたでしょうか?

今回はここまで

2017年1月10日火曜日

Gゲージ車両の作り方 二軸動力(その1)

(旧ブログ「吊り掛け電車の通い道」の記事を、編集しまとめたものです)


今回から、Gゲージ車両の作り方を紹介していきたいと思います。

第一回は、簡単な二軸の動力車両の作り方について

<用意するもの>
・Gゲージの車輪
(線路集電するのであれば金属車輪、電池電源の場合はプラ車輪、車輪を外すため、スポーク車輪ではなくプレート車輪【中央部に穴が開いていないタイプ】をおすすめします。)
・プラ板(床板用 厚さ3ミリ程度の厚めのものがおすすめ。無い場合は3mm厚の木製合板でも可)
・金具(軸受パーツと床板を固定するためのもの。作例ではユニバーサル金具を使用)
・ギヤボックス(作例では、タミヤのハイパワーギヤーボックスHEを使用)
・ギヤ(車輪伝動用。作例ではレインボープロダクツ製ギヤを使用)
・ボールベアリング(軸受の摩耗を防ぐ。使用しなくても可。作例ではタミヤのジャンク品を使用)
・スイッチ(逆転用。作例ではタミヤの逆転スイッチを使用。詳細は「電気配線編」で紹介します。)
・燐青銅板(線路集電する場合のみ使用。秋葉原千石電商等で販売。詳細は「電気配線編」で紹介します。)
・電池ボックス(電池を電源にする場合のみ使用。作例では006P電池ボックスを使用)
・12Vモーター(線路集電する場合のみ使用)
・導線(電気配線用。詳細は「電気配線編」で紹介します。)
・ネジ(作例ではM3タイプのネジを使用)
・車体素材(厚紙・プラ板・真鍮等お好みで。厚紙・プラ板を使う際は0.5ミリ厚以上の板を使うのがおすすめ)

・工具(Pカッター・ニッパー・ピンバイス・タップ等)


車両の製作

1.床板・軸受の製作

まず最初に、床板を製作します。
床板の形状は、製作する車両によって変わります。
今回は、電気機関車を作るため、中央部が少し広がった床板を作ることにしました。

タミヤの3mm厚のプラボードをPカッターで切り抜きます。

切り抜いた床板
次に、車輪を支える軸受を作ります。
軸受も床板と同じく、3mm厚のプラボードから製作することにしました。
車軸が入る部分は、車軸径に合わせて穴を開けます。(ボールベアリングを使用する場合は、ボールベアリングの外径)
軸受部分は、合板からは作りにくいかもしれません。
プラボードから製作した軸受
軸受部は、動力製作後、固定することにします。


2.動力装置の製作

次に、動力装置を製作します。

まず、ギヤボックスを仮組み(ネジを使わずに仮に組み立てること)し、動力配置をシミュレーションします。
今回は、ギヤボックスにタミヤのハイパワーギヤボックスHEを使用しました。
タミヤのギヤボックスはバリエーションが豊富で、さまざまなギヤ比のものが発売されているので、動力製作する際に便利です。
遊星ギヤボックスなどの少し変わったギヤボックスも発売されているので、それらを使用して少し変わった動力を作るのも面白いかもしれません。
今回使用したギヤボックス
今回は、このギヤボックスを横向きに設置して、クラウンギヤを使って2軸両方の車輪に伝動させることにしました。
動力配置のシミュレーション
次に、ギヤ付き車輪を製作します。
Gゲージでは今のところ、ギヤ付きの車輪は分売されていないため、レーマンの客車用車輪を一度分解して、ギヤをはめ込みます。
(注意!:ギヤ付き車輪への加工を行うと、メーカー保証対象外となる場合があります。改造は自己責任で行ってください)
レーマン製客車用車輪
レーマンの車輪は、3mm径の車軸と、左右に分かれる車輪パーツで構成されています。
(バックマンなど、他社の車輪は少し違う構造になっているようです)
レーマンの車輪の構造
ギヤ付き車輪にするためには、この車輪部分のパーツをいったん外す必要があります。
しかし、車輪部分は圧入されているため、なかなか外すことができません。
今回は、車輪を炎天下に放置し、車輪部分を温めてから外しました。
冬場は、湯せんで温めても外すことができそうです。
(温めて外す場合は、金属部分が大変熱くなるので、ご注意ください。また、車輪は曲がりやすい素材のため、慎重に外してください)
なお、温めて外す方法以外にも、万力に挟んでペンチで外す方法も使えそうです。
(万力を使う場合も、車輪が曲がらないよう慎重に外してください)

分解した車輪のイメージ
車輪の分解が終わったら、駆動力を伝える平ギヤをはめ込みます。
レーマンの車軸径は外側のプラスチックが6mm、内側の金属棒が3mmです。
今回は、車軸の外側の径に合うギヤがなかったので、タミヤの平ギヤ(穴径3mm)の穴を広げ、レインボープロダクツの、6mm穴のアルミボス(ギヤを軸に接続する部分)にはめ込み使用することにしました。
6mm穴のアルミボスにはめ込んだ平ギヤ
 ギヤができたら、車輪にはめ込み、先ほど外した車輪を再びもう一方の車輪にはめ込み、ギヤ付き車輪は完成です。
完成したギヤ付き車輪

3.動力台車の組み立て

次に、動力台車を組み立てます。
軸受にボールベアリングをはめ込んだ後(ボールベアリングは使用しなくても可)、床板と接続するため、金具を取り付けます。
金具は、取り外しができるようにするために、ネジで固定させます。
なお、作例では車輪の真上に金具を取り付けましたが、メンテナンスの際に取り外しが難しくなってしまいました。
そのため、製作される場合は、なるべく車輪の真上を避けて金具を固定することをお勧めします。
軸受に取り付けた金具
そして、床板にギヤボックス・軸受のネジ穴をあけ、固定させたら、動力装置の完成です。
完成したギヤボックス
この段階で、モーターが正常に動くかどうか、ギヤボックスや車輪に異常がないか確かめるため、コントローラーをモーターにつないで、試運転をします。
コントローラーと接続させた動力装置
この後、電気配線をしていくのですが、長くなってしまったので、つづきは次回。